不安定で落ち着きのないメロディ&ヴォーカルなのですが、この取り留めのなさが彼の手にかかると最高にユニークなポップになるのです。ヴァン・ダイク・パークスやポール・ウィリアムス(彼の作詞も収録)との交流、さらに本作収録の「Fill Your Heart」をカヴァーしたのがタイニー・ティムとデヴィッド・ボウイという事実も見逃せません。鬼才たちの交差点を期せずして演出した不安で不思議なSSW。アレンジにはカービー・ジョンソンの名もあり、ストリングスを響かせています。.
77年に74歳の生涯を閉じたビング翁がまさに死の直前まで録音していたUK制作アルバム。死期を予感していたかのように選曲は一年と季節の移り変わりを描き出したものばかり。人生という大きなカレンダーですね。ファンキーな「On The Very First Day Of The Year」でもバック負けしていない意地はさすが! 聴き終えると涙が出ます。.
A面ではギター四重奏団で「Davenport Blues」「In A Mist」などを早世した天才ビックス・バイダーベックの楽曲をビブ・チャールズによるギター・アレンジで演奏。レパートリーの選択センスがライ・クーダー「Jazz」に非常に近い一枚です。というより、発売年からしたら、あのコンセプトをジャズ・サイドから先取りしていた一枚かも。B面は戦前スイング・ギタリストの流れを汲む人気の高い二人、カール・クレスとディック・マクダナフの作品を、娘のメアリー・ピザレリとデュオでやっています。これもまた素晴らしいです!.
ウェストコースト・ジャズ界の多忙男バド・シャンクが、モダンフォークのレパートリーを自身のフルートとジョー・パスのギター&ブラジリアンなバックでスリリングにジャズ化した異色作。ディランの「Don't Think Twice」や「Blowin' In The Wind」、果ては「This Land Is Your Land」みたいなナンバーまで大胆に洒落させました。「Fleight Train」もスリリング! こういう実験的な試みがジャズ界で60年代に精力的に行われていたことって、今までほとんど紹介されていないですねえ。.
収録曲・データ
【曲目】Quit Your Low Down Ways / Don’t Think Twice / Bonsoir Dame / Blowin’ In The Wind / Charis // Freight Train / Copper Kettle / I Am A Pilgrim / Strawberry Kisses / This Land Is Your Land
映画「さよならチップス先生」からのナンバーを歌うオススメ盤です。彼らの中でも後期の作品で、一番大人っぽいかも。マジカルなアレンジが次々に飛び出します。キュートなリズム・セクションとオルガン、そしてボサ・ナンバー「Where Did My Childhood Go」まで飛び出す始末。「Walk Through The World」など、B面で連発されるレベルの高いチルドレン・ソフトロックに涙!.
【曲目】I Whistle a Happy Tune / Whispering / Mockin' Bird Hill / Easy Goin' / Over the Rainbow // Tammy / William Tell Overture / Red River Valley / Londonderry Air / Marie / Gypsy Love Song / Estrellita (Little Star)
「Tobacco Road」など数多くの名曲を残すナッシュヴィルのソングライター。自分でも歌います。このアルバムで歌っているのは、タイトル通り「普通じゃない歌」で、世をすねてひねくれた諧謔ソングがほとんど。まるでナッシュヴィルのランディ・ニューマン。しかも、メロディはとことん美しいというのですから…。「To Hell With Love」なんて物騒な曲(しかし美しい曲)から本作も幕開け。アニタ・カーが2曲アレンジで参加。.
長年の憧れの人だったドン・コスタにアレンジを任せて作り上げられたソロ6th。ハンク・ウィリアムスの「A Heart Of Gold」を見事なオーケストレーションでアレンジしたA1で幕開け。選曲も含め、自信の証がセルフ・タイトルになったのでしょう。聴く度に発見のあるレコードでもあります。「Groovin'」カヴァーの穏やかなグルーヴにはいつも泣かされます。.
収録曲・データ
【曲目】A House Of Gold / Here's That Rainy Day / Make Believe / On And On / You Are So Beautiful // Groovin' / While My Guitar Gently Weeps / When Sunny Gets Blue / I Love You / Through The Eye Of The Eagle
セカンド・アルバム。リトル・フィートのポール・バレアが中心となって彼女をバックアップ。マイケル・マクドナルドとデュエットした「Let Me Go Love」がAORファンの琴線をくすぐりますね。奔放で快活なウェストコースト・フィーリングを基調としながら、1979年という時代を反映したコンテンポラリーなムードもちゃんとあって。早くに亡くなったのが惜しまれます。.
【曲目】Fascinatin' Rhythm / A Foggy Day - Soon / Clap Yo' Hands / Embraceable You / Mine / Somebody Loves Me // I Got Plenty O' Nuttin' / Summertime / Bess, You Is My Woman Now / My Man's Gone Now / Nice Work If You Can Get It / For You, For Me, For Evermore / Liza (All The Clouds'll Roll Away) // 'S Wonderful / Love Is Here To Stay / They Can't Take That Away From Me / The Man I Love / Love Walked In / Oh, Lady Be Good // Preludes #2 And 3 /Maybe / Someone To Watch Over Me / They All Laughed / Bidin' My Time / I Got Rhythm
あのオシドリ夫婦が70年代にこれほどソフトロック度の高い傑作を残していたとは! 「Sing」や「カリフォルニアの青い空」の突き抜けるような爽快感、アダルトな「煙が目にしみる」、イーディーがしっとり歌うJTの「Don't Let Me Be Lonley Tonight」オズモンズを迎えた「We Can Make It Together」、全てが完璧。マイク・カーブとドン・コスタ仕事。さすが!.
収録曲・データ
【曲目】Sweet Surrender / I Am A Woman / Sing A Song / What Am I Cryin’ For / It Never Rains In Southern California // Feelin’ / Don’t Let Me Be Lonely Tonight / Smoke Gets In Your Eyes / We Can Make It Together / Happy
【曲目】Nagasaki Mono-Gatari / Suite Ita Noni / Samisen Madorosu / Yuraku-cho de Aimasho / Sendo Kawai-Ya / Wakare No Ipponsugi // Nagasaki / Yie Lai Shan / So-Ma Bon Uta / Samisen Mambo / Akogare Wa Basha Ni Notte / Dahil Saiyo
バーバラ・ルイスのカヴァー「Hello Stranger」が、メロウ・ラヴァーズ感覚で最高! イントロのフワフワしたコーラスでもう昇天しちゃいます。なぜだか涙腺緩むんです…これを聴くと。のっけのタイトル曲もゆったりグルーヴのいい曲。「If I Can't Have You」がディスコで大ヒットする前夜、一番脂の乗っていた頃のアルバムです。タフでタイトなリズムを産み出すのはスコット・エドワーズ&ジェームス・ギャドソンのリズム隊。.
収録曲・データ
【曲目】Love Me / Hello Stranger / I Can't Get You Outa My Mind / I Know / Without You (There Ain't No Love At All) // Good Sign / She'll Be The Home / (I Don't Know Why) I Keep Hangin' On / I'd Do It Again / Uphill (Peace Of Mind)
不倫ラブソングの決定盤「Me And Mrs. Jones」で大ヒットを飛ばす以前のビリー・ポールです。ギャンブル&ハフのプロデュースで制作したセカンド・アルバム。ファーストがライヴ盤(これも傑作!)だったので、スタジオ盤としてはこれが初。彼はソウル一直線の人ではなく、ジャズにも目配りを見せていて、その混ざり具合が「Mrs. Robinson」や「Everyday People」の奇跡的にかっこいいカヴァーに結実しています。「Psychedelic Sally」「Windy」などキラー連発。「Me And Mrs. Jones」でしか彼を知らない人にこそ聴いてほしい凄いアルバム!.
収録曲・データ
【曲目】Ebony Woman / Mrs. Robinson / Windmills Of Your Mind / Everyday People // Let’s Fall In Love All Over / Windy / Psychedelic Sally / Traces / Proud Mary
70年代クインシーの最高作のひとつと思います。ハービー・ハンコックの「Tell Me A Bedtime Story」のカヴァーに仰天。エレピ&ストリングスによるゴージャスで超メロウな6分45秒。ハービーの指の動きをストリングスで再現した後半には、時間が完全に止まります。アシュフォード&シンプソン、ルーサー・ヴァンドロス、チャカ・カーンらゲストシンガーも豪華!.
収録曲・データ
【曲目】Stuff Like That / I'm Gonna Miss You In The Morning / Love, I Never Had It So Good // Tell Me A Bedtime Story / Love Me By Name / Superwoman (Where Were You When I Needed You) / Takin' It To The Streets
オーストラリア産ファンキー・ブルーアイドソウル・バンド。この極上アンサンブルは、フロアーのダンスバンドだったから生まれたのでは? 推進力のあるサウンドで、身の引き締まるようなディスコ〜ファンク・グルーヴを展開しますが、そこにそっと収められた数曲の泣きのミディアム、なかでも「Heading In The Right Direction」に悶絶します。同時期に活動した僚友のスタイラスも忘れられないバンドですね。.
収録曲・データ
【曲目】Good Time / Heading In The Right Direction / Who's This Guy? / Sweet Kisses / Funky Max // Rocco / Baby's Gonna Make It / She's Knocking On My Door / What Are You Going To Do For The Rest Of Your Life? / Number Forty-Three
Audiophile系のレーベルでのダイレクト・カッティング盤。ラリー・カールトン、ジム・ケルトナー、マイケル・オマーティアンらが参加した一発録り。9曲中4曲を締めるインストも、レゲエ調あり、ファンキーなフュージョンありと実に多彩。スティーヴィー・ワンダー「To Know You is To Love You」のカヴァーも秀逸。作品の性質上、もし復刻や配信があっても、この醍醐味は味わえないでしょうね。.
クライヴ・デイヴィスがAristaの社長に就任した際、前身のBellから継続して契約したのはメリサ・マンチェスターとバリー・マニロウだけだったとのこと。その強い信頼に応えたバリーの最大のヒット作。なんといってもディスコ・サンバの名曲「Copacabana」収録なんですが、じつはこの曲は全米チャートでは8位が最高。全米ナンバーワンにはなってないのですね(アルバムから最大のヒットは「Can’t Smile Without You」で3位)。しかし、しっかり時代を超えました。.
ゴルゴーニ・マーティン&テイラーでの活動を経て、ようやくリリースされたファースト・ソロ。すでにソングライターとしての名声があり、シーンの大物として知られていたのに自分の名前で出したアルバムは初めてなのでした。メリリー・ラッシュに提供した名曲「Angel Of The Morning」自演版をはじめ、淡いテイストながらチラリと生き様が見え隠れします。このアルバムをひそかに愛する人が多いのもうなづけますね。.