1908年生まれと、いわゆるモダンなスタイルのジャズシンガーとしては最古参の部類に属する彼女。1930年代から名唱を残していますが、50年代後半以降は引退状態に。そんな彼女が復帰したアルバムです。サブタイトルにある通り、1971年秋のレコーディング。彼女の現役時代には存在していなかったスタンダード「Moon River」が、とてもいいですね。ディック・ハイマン、バッキー・ピザレリ、ラスティ・デドリックらがバックアップ。.
なんとなくイカさないジャケですが、聴いてビックリ。ヴィブラフォンをメインにしたジャズ・コンボ。全曲クルト・ワイルで統一というコンセプトが新鮮です。ハイスピードでグルーヴする「Speak Low」に仰天。「This Is New」や「A Rhyme For Angela」にはブラジリアン・テイストが。ラストの「September Song」はフュージョン風味のリズムの刻みすら。掘り出し物だと宣言します。.
フリー・デザインのデドリック兄弟姉妹を音楽の道に誘う大きな要因の一つが、おじであるラスティ・デドリックがニューヨークのジャズ・シーンで活動していたことでした。ラスティはスター・プレイヤーではありませんが、トランペッターとしてのみならず知的な構造を持つ楽曲の作曲/アレンジにも多才を発揮した人物。この71年のソロでもソーンヒル的なビッグバンド、女性シンガー起用曲、小気味好いコンボ、知的なボッサなど、才能の奥深さを慎ましく示しています。.